本日の1冊 『断章のグリムIX なでしこ・下』 [ライトノベル]
始まりは金森琴里の自殺
それを発端に立て続けに起こる出来事
悲惨な列車事故、現れた犬の異形、梢枝の首切り自殺
一輪の百合、そして何かの気配
蒼衣が感じた違和感、足りないカード
蒼衣自身のカードで作られた<目醒めのアリス>
それらが揃ったとき、全ての終わりが始まる
甲田学人さんの 『断章のグリムIX なでしこ・下』 です。
今巻は、前巻『断章―IIIV なでしこ・上』 で無残な姿で発見された梢枝の首切りから始まります。
自らの喉にナイフを突き刺し押し込んでゆく光景をこれほどまでに丁寧に見せつけられるとは……。
冒頭からなかなかやってくれます。
私、この一歩間違えば悪趣味とも言えそうな、執拗な表現の文章がホント大好物なのです。
あまりの異様さに目が離せず、背筋にゾクリと悪寒を走らせながらも引き込まれて行く感覚。
これはもう快感と言ってもいいくらいです。
みなさんにもぜひ、頭の中にイメージを浮かべながら、じっくりと味わっていただきたいですね。
とは言うものの、今回の泡禍は期待していたほど凄まじいものではありませんでしたので、正直ホンの少し物足りなさもありましたけれど……。
普通であることを心の置き場にし、それを守り通すために、事件の最中日常へ戻ってゆく蒼衣。
泡禍に関わるもの全てを滅ぼすことを誓い、憎しみで自らを支える復讐者である雪乃。
今巻では、蒼衣と雪乃の泡禍に向き合うスタンスの違いがこれまで以上にはっきりと描かれています。
それでも、ふたりはこれからもパートナーとして、共に泡禍に挑んでゆくことになるのでしょう。
なによりも、蒼衣は雪乃に普通であって欲しいと願っていますし、そして蒼衣が描いている思惑には、蒼衣の<目醒めのアリス>と雪乃の<雪の女王>、そして夢見子の<グランギニョルの索引ひき>が不可欠なのですから。
物語はまだ続きます。
果たして次は如何なる悍ましい泡禍が、恐怖と絶望に満たされた光景を見せてくれるのでしょうか。
イラスト担当 三日月かけるさんのWS:MIDORIYASIKITEN
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