本日の1冊 『藍坂素敵な症候群』 [ライトノベル]
―私は人を殺そうとしている―
この手の中にあるメスはこれまでと同じように
あの眼球に、あるいは首筋に、それとも左胸に
さしたる抵抗もなく吸い込まれてゆくだろう
切り刻まれた者は
血しぶきを撒き散らしながら倒れ
やがて絶命する
はたしてその瞬間
彼らは何を見、何を思うのだろうか
次に目覚めた時それを忘れてしまっている彼らに
答えを求めることはできない
けれど、私は覚えている
その感触を、その音を、その熱を
そして血の臭いを
たとえそれが彼らを救うことなのだと
必要なことなのだと
自分のすべきことなのだと判っていても
私の心は悲鳴を上げる
人殺しになどなりたくないと…
それでも私は人を殺してゆく
殺人鬼になってゆく
それだけが、かけがえのない
どこにでもあるものを守る術だというのなら
やがて消えてゆくこの命だけが
この素敵な世界を守ることができるというのなら
大切な人を救えるというのなら
それでもいいと思えるから…
水瀬葉月さんのWS:Minase Hazuki official site
イラスト担当 東条さかなさんの商業サイドWS:diabolismⅢ web.
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